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父の遺した時間

趣味の陶芸をかれこれ45年ほど続けていた。

 

私の父の話だ。

 

私が小学校に入学する頃から仕事が休みの日には

大覚寺のバスターミナル近くの陶芸工房に自転車で通い出した。

 

私達もよくついていっては、土や釉薬を選ぶ楽しさや

粘土を捏ねる大変さや楽しさや

手捻りや轆轤の特徴や面白さを知り、また

紙より数倍染み込みやすく仕上がりの予測不能な絵付けの難しさや

焼き上がりを楽しみに待つ喜びや何やかんやを教えて貰った。

 

 

父が最初に作ったのは家族五人分のお抹茶の茶碗。

我が家は日常的にお茶を点ててはほっこり一息つく生活が好きだったので

(あ、家に茶室があるとか炉があるという事ではありませんよ(^-^))

ご飯用のお茶碗よりは、割れたり欠けたりする事が少なそうだから

このアイテムにしたのかな?と思っていた。

 

小さな器からはじまって、直径50cmくらいの大皿まで広がり

晩年はまた、手仕事ならではの造形や肌合いや

晩酌で呑み干した空瓶のガラスを利用した釉薬で遊ぶ事に夢中だったようだ。

 

父の遺品は基本的には少ない。

ほとんど物を持たない人だったから。

 

洋服ダンスには、礼服以外では

春夏用のオックスフォードのシャツが

ブルー地2点とクリーム色とサーモンピンクの各1点。

赤色基調のチェックのシャツが6点。

秋冬用のチェックのネルシャツが5点ほど。

全部、ボタンダウンシャツだ。

多分、フォーマルシャツ以外は、すべてそうだったに違いない。

 

グレイのスゥィングトップ。ベージュのジャンパー。

ツゥィードのブレザー2点、コート1点。

チノパンツが4点。 コーデュロイのパンツが3点。

その他は、もう4〜50年前に母(父からすると嫁)が編んだ

極太ウールの長袖のセーター2点とベスト1点。

腕時計が2点。靴は7足。

定年退職してから長いので、ネクタイやスーツなどは既に処分済。

 

和箪笥には正絹とウールの着物各1点。

ここ一番の一張羅は、ご縁あって人間国宝に染めて貰った

天蚕の作務衣1点のみ。

 

鞄もほとんど使わず

もう40年以上使い込んでいる四幅の風呂敷を愛用していた。

 

持ち物の少ない父が、唯一たくさん遺してくれた物は

趣味で作った陶芸作品だ。(他は写真集や書籍かな)

 

小鉢類はお豆さんの炊いたんや椎茸昆布なんかを容れたり

小皿類は各自が取り皿に使ったり

中くらいの鉢は、肉じゃがや筑前煮なんかを盛りつけたりと

実家でも、それぞれの嫁ぎ先でも日常使いしているが

大鉢や大皿は使う機会も限られているので

物置や滅多に明けない押し入れの奥に保管していたようだ。

 

整理していると、丁寧にくるんだ器が

無駄のない順番で段ボールにしっかりと詰め込まれており

私とは正反対の几帳面さがそこにも充ち満ちて

クスッと笑って、ホロッと泣ける。

 

こんなに良い器もたくさん作ってたんやなぁーと

主亡き器の山をみんなで愛でながら

「でも、これ、どうしたもんかねぇ。

家で使うには、ちょっと大きいのが多いもんねぇ・・・」と。

 

話し合った結果、私がお世話になっているお料理屋さんの中で

この手合いの器も実際に使われている何軒かの店に使って頂く事にした。

 

これはきっと、あの店のお料理に活躍してくれるはず。

これはあのお店の八寸を二人分載せてもらったらピッタリ!

これは、お刺身の盛りつけにちょうど良いよね。

そんな事を考えるひと時を、父はこうやって遺してくれてるんだな。

 

器の中には、父が轆轤をひき、私が絵付けしたものも出てきた。

そう言えば、私が結婚する前後に「絵付けして欲しい皿がある」と

父に誘われ、久しぶりに件の陶房に幾度か通った事も思い出した。

 

思えば、美大を卒業して商品企画の仕事に就いてからは

デザイン画は描けど、絵を描くことが少なくなった娘に、

そして、嫁入りすればさらにそんな時間など無くなるであろう娘に、

純粋に描く喜びは忘れるなと言いたかったのかな?とも思える。

 

父の意図など、今となれば知る術もない。

 

先日、家族揃って

器を使ってくださっているお店にお邪魔した。

父の大好物や母の好きなものを

プロの料理人さんに盛りつけてもらって

父の器は少々照れくさくも得意気だ。

(海老、反対側から撮っていてすみません!)

みんな一斉に歓声を上げ大盛り上がり。

何より母が大喜びで嬉しいな・・・

 

生きているうちに、何でこんな場面を用意してあげられなかったのかと

気が利かない、実に間抜けな自分を悔やむけれど・・・

ね。きっと、そこからは全部見えてるよね?

 

さぁ一緒にいただきましょう!

美味しかったね、ごちそうさま!

ありがとう☆

 

 

 

 

 

 

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